時代の流れにともなって、社内のIT関連機器は増えていきます。ビジネスと最先端技術が切っても切れない関係となった今日において、当然と言えるでしょう。そこで、あらゆる企業内で、適切な資産管理の重要性が増しています。

一口に資産と言ってもさまざまなものがありますが、大きく2つに分けることができます。ひとつはPCや周辺機器、サーバーなどのハードで、もうひとつがソフトです。

IT資産管理の中でも、特にソフトウェアライセンス管理は非常に重要なポイントと言えます。そこで、今回はライセンス管理の重要性と、ポイントについて詳しくご紹介します。

ソフトウェアライセンス管理が重要である理由とは?

オフィスでは、毎日のようにさまざまなソフトが使用されています。当たり前の存在でありながら、PCなどのハードとは違い目には見えません。特に、今日ではDL購入も一般的となり、ディスクなどのメディアも存在しなくなりつつあることから、管理への意識が甘くなってしまいがちです。

ただしIT資産管理において、ソフトウェアのライセンス管理はハード管理以上に重要な意味と役割を持っています。まずはその重要性について詳しくご紹介します。

社会的リスクへの対応としての重要性

組織運営では、常に社会的リスクへの対応について考える必要があります。たとえば、コンプライアンスに反する運営が発覚した場合に、社会的な信用を大きく失うリスクがあるということも想定しておかなければなりません。今日では、よりコンプライアンスが重要視されるようになっているため、大企業では専門部門・部署が設けられているケースも増えました。ライセンス管理はそのようなコンプライアンスにも直結する問題となり得るのです。

まずは、ソフトのライセンスの仕組みについて整理しておきましょう。一般的には、メーカーからお金を支払い、ソフトを購入します。その後は自由に使うことができると考えている方も多いかもしれませんが、これは、あくまでメーカー側が許諾した範囲内での話です。

コストをかけてソフトを購入したとしても、そのソフトの著作権はあくまでメーカーにあります。そのため、ソフトそのものではなく、使用権を購入したに過ぎません。これがソフトにおけるライセンス購入です。

もし、定められているインストールが可能な台数をオーバーして使用していた場合や、許諾されている用途外での使用は著作権の侵害にあたります。

リスクに対する意識を持つことができる

企業として他社の著作権を侵害することは、コンプライアンス上、非常に大きな問題と言えるでしょう。

意図的に不正コピーソフトなどを使用するのは論外ですが、案外、権利を侵害する意図がなかったとしても、無意識のうちに違反しているというケースも決して少なくありません。思いがけない形でコンプライアンスに違反し、組織に大きなダメージを与えてしまうこともあります。だからこそ、徹底した管理が求められるのです。

IT資産管理がコンプライアンスに影響することについては、あまり意識していない方が多いようです。意識していないからこそ、問題が発生してしまった場合の対処ができず、さらに重大化してしまう可能性があります。適切なIT資産管理を行うことで、リスクを軽減しましょう。

金銭的なリスクへの対応

また、金銭的リスクへの対応という一面もあります。ライセンスの購入・維持にはコストがかかります。仮に、必要以上のライセンスを購入・契約していた場合、余剰コストが発生していることになるでしょう。ライセンス管理は、コスト管理にもつながるのです。社内のPC、ソフトの両方が適切に管理されておらず、正確に状況を把握できていなければ、余計なコストが積み上げられていくケースもあります。

あらゆる資産管理において、コストは切り離すことができないポイントです。もし、資産管理が過剰なコストの原因となっているのであれば、何らかの対処をするべきでしょう。

ライセンス違反が起こっていた場合、リスクはさらに増大します。ライセンス違反への意識が薄く、管理が不十分なままソフトを運用しているケースも多いようです。ただし、ソフトを利用している時点で使用許諾に同意していることとなり、メーカーから利用状況の調査や監査の要求があると、拒否することはできません。

結果として実際に調査が入り、ライセンス違反が発覚するというケースも少なくありません。そうなれば追加費用のみでなく、違約金を請求されることになります。ここ最近でも億単位の違約金支払いが認められたケースがあることからも、金銭的リスクは決して小さなものではないことがわかります。

さらに悪質な著作権侵害の可能性が認められた場合、裁判所からの証拠保全命令により、社内のPCが利用できなくなってしまうというケースもあります。IT機器が欠かせない今日のビジネスシーンにおいて、このような状況になれば、業務を停止しなければならなくなります。つまり、さらに大きな損害が発生するのです。

ソフトは物理的に目には見えないことから、管理が甘くなることが多いようです。その甘さが大きな金銭的損失のリスクを高めてしまうこともあります。この点は、IT資産管理において必ず頭に入れておくべきポイントです。

ライセンスは契約である

ソフトの管理というと、社内で保有している「モノ」の管理と同じように考えられてしまう場合も多いようです。ただし前述した通り、ソフトの著作権はあくまでメーカーのものであり、使用の権利のみを保有しているに過ぎません。

つまり、このライセンスの管理とは契約管理という側面を持っていることを忘れないようにしましょう。

ソフトには一般的に使用許諾契約書がついています。これは、ユーザーとの間で交わされる契約書であり、使用前に必ず確認し守らなければなりません。近年では、インストール前に同意してはじめて使用可能となるケースも多くなりました。

契約に同意した以上、すべての内容に同意したとみなされます。通常、企業間の契約であればその内容を細部まで確認し、検討した上で同意するでしょう。ソフトを使用する場合や、管理においても同様の慎重さが求められます。

ソフトウェアライセンス管理のポイントは?

その重要性については前述の通りですが、具体的にどのように管理すればいいのかわからないという方も多いでしょう。そこで、ここでは組織におけるソフトウェアライセンス管理のポイントについてご紹介します。

各ソフトのライセンスに関する情報収集と整理

ライセンス管理において最初にしなければならないのが、自社内の情報収集と整理です。使用されているソフトはひとつとは限りません。また、ソフトやその購入形態によって、許諾されている内容は異なります。

例えば、個人向けのパッケージの場合、インストール可能台数は1台限り、また業務使用が禁止となっているケースもあります。一方、法人向けパッケージの多くは使用台数や用途に合うようにさまざまなパッケージが用意されています。また、今日では買い切りではなく、月額・年額料金を支払うことによって使用できるサブスクリプション方式のソフトも増えました。そのため、単に数の確認をするのみでは不十分です。

各ライセンスがどのような内容になっているのかをしっかりと確認し、整理していきましょう。

IT資産管理ツールを上手に活用しよう

ライセンスの情報を収集、整理したあとには、不足しているのであれば買い足しを、そして余剰があるのなら契約を解除するという処理を行います。これで現状の整理は完了ですが、ライセンス管理は常に継続しなければなりません。その際に便利なのが資産管理ツールです。

IT資産管理が多くの企業において重要になり需要が高まったこともあり、さまざまなツールが登場しています。中には、ネットワークに接続された端末のインストール状況を自動収集できるものなどもありますので、うまく活用しましょう。

ただし、ライセンス管理においてはツールだけですべてが完結するわけではありません。ライセンスの内容について正しく理解することが大切です。

まとめ

IT資産管理は、今やビジネスにおいて欠かすことができない要素となりました。中でもソフトウェアのライセンス管理は非常に重要性が高いものです。

その重要性をしっかりと理解した上で、適切な管理体制を整えていきましょう。

難しいイメージを抱いている方も多いかもしれませんが、ひとつひとつのポイントをしっかりとチェックしていけば、全体の仕組みが見えてくるはずです。

また、近年では管理を一貫して依頼することのできるサービスなども登場していますので、社内のみでの対応が難しい場合は選択肢のひとつに加えてみてください。