このブログシリーズの前編でお伝えした通り、ITサービス管理(ITSM)およびIT資産管理(ITAM)は、コンプライアンスとコストを最適化しつつ、業務効率を最大限に引き上げ、サービス提供を向上するため、IT部門の全体的なプランをサポートする最強のコンビとなります。

前編では2つの事例を取り上げました。1) 「セルフサービスでユーザーに権限を与える」、2) 「より的確かつ速やかなインシデント解決」をご紹介します。

この投稿では、残りの3つの事例をご紹介します。3) 「主体的な管理で問題のある資産に対応する」、4) 「効果的な変更管理」、5) 「ライフサイクル全体で常に情報を把握」をご紹介します。

3. 主体的な管理で問題のある資産に対応する

資産情報とインシデント・問題管理を相互に関連付けることは、一部のデバイスが絶えず故障する理由を適切に評価する上で役立ちます。

理由を評価・特定することにより、IT部門は、デバイスが故障する度に不必要なコストをかけプロセスのダウンタイムにつながるデバイスの修理を行う代わりに、全体的なリスクを主体的に管理できます。

例えば、次回行われるベンダーとの交渉とデバイス統一化の取り組みに備え、データを準備しているカレンさんというIT責任者がいたとします。

カレンさんは問題に関するデータに目を通し、関連するデバイスの情報を分析し、一部のデバイスの故障率が他の機種よりも30%高いことに気付きました。

購入履歴や保証範囲など、資産に関する情報をさらに詳細に調べた結果、カレンさんは故障率の高い機種の修理が無駄であると判断し、今後はユーザーの生産性を維持するために該当機種の修理は行わず故障した場合には買い替え、別の機種に統一することを決めました。

さらにカレンさんは、購入当初見込まれていたライフサイクルを過ぎた後も問題なく利用できているハードウェアを特定するため、インシデントと問題に関するデータを調査しました。

カレンさんの分析では、市場の基準である3年ごとのハードウェアの買い替えサイクルに沿う代わりに、買い替えサイクルを4年に延長すれば企業は既存のデバイスをより長く利用できるようになることが明らかとなりました。

手順とデバイスの基準にいくつか重要な変更を加えるだけで、全社規模でコストを節減でき、コストを最適化できます。もしカレンさんが従来のアプローチを取っていたら、サービスデスクに寄せられる問題しか見ることができず、アナリストが特定のユーザーの問題を解決するまでにかかる時間を理解するために電話での問題解決率に目を向けていたかもしれません。

「真実を示す単一のシステム(one system of truth)」、すなわち情報が収集され、絞り込まれ、分析される単一のレポジトリを構築することで、結果を相互に関連付け、より多くの情報に基づいて判断できるようになります。

これにより、問題が社内の広範囲に影響するかを見極め、ハードウェアの契約やライセンス情報を確認しつつ、問題を解決するための是正措置を主体的に取ることが可能となります。明確な是正計画を作成する際に、リスクやリスクの度合いを認識するための情報があれば、問題を機会に変えることができます。

4. 効果的な変更管理

EMAが実施したアンケートに参加した企業の32%が、情報の把握状況を改善することでIT業務の効率化を実現できたと回答しています(「Reinventing ITSM」、EMA、2019年)。

変更管理プロセスの一環として資産に関する情報を利用できるようにすれば、少なくともある程度あらかじめ潜在的なリスクを特定し、プロセスをより効率化することができるため、変更が効果的かつ正常に実施されることを保証することに役立ちます。

例えば、資産に関するより多くの情報をすぐに利用できれば、変更諮問委員会(CAB)はレビューサイクルの一環として次のような重要な問題を見直し、回答できます。

  • 社員が希望するライセンスか、業務に必須のライセンスかを問わず、適切なライセンスが利用でき、適切に割り当てられているか」
  • 「追加のソフトウェアパッケージ、ドライバ、ハードウェアのアドオンは必要か」、「必要なライセンスは利用できるか」
  • 「ハードウェアの構成は容認できるものか」、「予期せぬインシデントや故障に対応するため、メモリの増設、接続の追加、容量やストレージの拡大により、ハードウェアを強化する必要があるか」

問題解決にかかる時間が重要な状況においては、資産に関する情報を不足なく把握することで、緊急の変更リクエストに対応する時間を加速できます。

例えば、ビジネスクリティカルなアプリケーションを実行中のサーバーがクラッシュし、速やかな交換が求められているとします。

この場合、インシデント対応チームは直ちに資産のインベントリ(目録)を確認し、すぐに利用できる代わりのサーバーがあるかどうかを把握できます。代わりのサーバーが見つかり次第、そのサーバーに関するあらゆる情報(サーバーの正確な場所、設置予定場所、必要なソフトウェアやアドオンなど)を活用し、チームは緊急の変更に着手できます。

5. ライフサイクル全体で常に情報を把握

多くの企業が依然としてスプレッドシートを使用して自社のハードウェアとソフトウェアを管理し、購買情報を記録し、デバイスを最初にリクエストした社員とデバイスとを関連付けていることは公然の事実です。

サービスデスクのアナリストが担当業務を効率的に遂行し、インシデントや問題を速やかに解決できるようになるためには、煩雑なスプレッドシートを使用せずに、資産の種類や利用状況など、自社環境にある資産に関するすべての情報を把握することが重要となります。

ところが多くの企業のIT部門が、1年に1度しか資産の確認を行っておらず、中には5年に1度という企業さえ存在します(「Navigating through the Complexities of the Fixed Asset Management Function」、EY)。

派遣先に初出社する日に派遣スタッフにデバイスを支給する人材派遣会社について考えてみてください。

スタッフは様々な職務に派遣されるため、ものすごい速さでデバイスの使用者が変わり、使用される場所が変わり、必要なアクセス権も変わります。

IT部門が手作業でインベントリ(目録)の監査を行っているとすれば、これらの変更は十分に管理されてないか、まったく管理されていない可能性があります。これにより、IT部門は自分たちが何よりも必要としているデバイスの状態とパフォーマンスに関する情報を把握できなくなり、重大なセキュリティのリスクが生じます。

ITSMとITAMのプロセスを統合することで企業が実現できることは以下の通りです。

  1. リアルタイムのスキャンを実行し、ユーザーと位置情報を調整できます。
  2. これによりサービスデスクはこれまでよりはるかに短時間でインシデントを解決し、お客様満足度を向上させ、セルフサービスの充実化を図ることができます。
  3. 自社のすべての資産の場所を常に把握することは、サービスとサポートの観点からだけでなく、資産の紛失や盗難がデータの完全性を脅かすセキュリティの観点からも極めて重要となります。

また、パフォーマンスデータ、問題、修正、パッチ情報、契約、ライセンスを管理し、ソフトウェアとハードウェアの投資が最適なパフォーマンスで動作し、社員の生産性に影響を与えないことを保証するためライセンスを付与することで、資産のライフサイクル全体を通して資産を管理することが極めて重要となります。

ITSMとITAMを統合し、ライフサイクル全体で常に情報を把握できるようになれば、多くの企業のIT部門が頭を悩ませているパズルのこれまで見つからなかったピースがきっと見つかるでしょう。